ボンヴィヴァン(伊勢外宮前 ボンヴィヴァン)

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プロフィール 河瀬毅 
 


 
■情熱を持ったムーブメント(09.01.09)       


2009年お正月。   

54歳になった僕は、4人の厨房スタッフと共に相変わらず慌ただしく動き回っている。   
皿も洗えば鍋だって洗う。油にまみれた汚れものは、どれ位の洗剤の量をスポンジにつければ汚れが落ち、どうすれば、その泡を最短時間かつ最少の水で洗い流せるのか。   
などと、たわいもないことを真剣に考えている。   
洗剤のついた泡がすすがれる鍋の真下には、次の鍋が待ち構えていて、上からすすがれた使用済みの湯がかかり、実際に洗われる番では、容易に綺麗になるという算段だ。   
蛇口の下でジャージャー湯を流し、たっぷりと洗剤のついたスポンジでゴシゴシとお湯と一緒に流しながら洗ったとしたら、それはもったいない作業。一個の洗いものに 対してそれぞれ洗剤と湯を使う勘定だからです。   サランラップを二度使えとは言わないし、香りが飛んだバニラの茎を再利用しろとも申しません。ただ、僕は無駄が嫌なだけ。   
自分自身がそれを許してしまえば僕の料理は成り立ちません。   
ここに、すずきが一本あったとする。ゴミ箱行きは、エラとヒレとウロコぐらいなもの。   産卵期の白子や卵も待ち遠しい。   
たとえ人がうっかりと跨いでしまいそうな物でもじっと眼を止めて一皿の料理へと引き上げたい。   
料理人の生き甲斐は、美味しいものを作りお客様に感動してもらうこと。   
そのためにも一皿の料理としてテーブルに登場させる道程を大切にしています。   
そこに到達するまでの道のりが大事。   
素材選び。ソース、フォン。鍋磨き。厨房掃除。ガス吹き出し口の炎の様子。   
全てに僕の気が入っていないと自分の料理とは、呼べません。   
僕は、カシミヤのコートの下にヨレヨレのパジャマは、着たくないのです。   
でも、そんな僕の鼻もちならない意気込みは、お客様に伝えようとは思いません。   
それでいいんです。だって矛先はスタッフに向けているのですから。   
レストランは、全員のチームワークで動くもの。   
それぞれの役割分担のどれひとつ欠けても上手くは回りません。   
機械式時計に例えるとシェフは、ガンギグルマです。   
ヒゲゼンマイが、ほどけるパワーで歯車は動く。テンプ、アンクルと動力が伝わり   
ガンギ車が、後に続く輪列をコントロールしているのです。   
おっと・・・その前に真っ先にぜんまいを巻かなければ動き出しませんよね。 
大事な部品が壊れてしまわないようにリュウズ(ネジ)をいたわり優しく、慎重に、慎重に・・・グリグリグリ。 

レストランで働いている本人が楽しくなければ、お客様は快楽的な気分になれません。   
スタッフには気分よく目覚め、歌でも口ずさみながらロッカーの鍵を開けてもらいたい。   
そのためにも僕は、頑張る。そして鼻息荒くスタッフに語りかけ、奮い立たせる。   
スタッフが、自主的に走り出せるためにレールを敷くのも大切な役目です。   
ボンヴィヴァンは、チームワークが良い。笑顔を絶やさない。と、お褒めの言葉を頂戴します。   
でも、仲良しごっこではありません。10人、いえ15人も居ればソリの合わない人間だ   っているかも知れません。   
不思議と、自分の事が大好きでオブラートに包むように自分自身を大切にする人間ほど、人を思いやる感情に無頓着です。問題が起きても自分を正当化しながら、それでも勝手に心を痛めてしまい悲劇のヒーローになりたがる。   
相談を受けても答えはひとつ。   
自分自身を磨くだけ。たくましく強くなって相手を優しくいたわる。   
悪口も陰口も言わない。聞いていることすら我慢できない。   
僕自身も含めてそんな人間でありたいと強く願います。       

そして僕は、そんな連中に囲まれている。スタッフは、決して能天気じゃありません。   
人間関係も含めて辛かったり悲しいことを背負う時もあるはずなんです。   
それでも健気に明るく振る舞う、いとおしい連中。       

僕は、いつか手に入れたい憧れの時計があります。   
アンティークのパテックフィリップ。世界最高峰。ロレックスもジャガールクルトも足元に及ばない夢の時計。  削断された歯車は通常の研磨工程の後に、爪楊枝のように細い桜の木で人間の手作業により   ギアのひとつひとつまでピカピカに磨かれる。そんな歯車と歯車が、かみ合ったとしても摩耗は生じず正確に時を教えてくれる。パテックフィリップ。ああ永遠の時計。       

ボンヴィヴァン。しなやかでありながら鋼鉄(ハガネ)のように我慢強い。   
故障知らずに時を動かす、頼もしい歯車達。   
今年も、しっかりと歴史を刻んで行きたいと思います。      









 

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