ボンヴィヴァン(伊勢外宮前 ボンヴィヴァン)

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プロフィール 河瀬毅 


■闘う料理人の卵達(06/04/06up!)

この愛くるしい連中をどのように説明して皆様にお伝えしましょうか。
ひたむきで純真で真っ直ぐで、そして一生懸命なこの金の卵達のことを。
高校生活を平凡パンチを友として過ごした私や私の仲間。
でもその対極にさえ居なかったです、愛読書が専門料理や料理王国なんて高校生は。
連中は中学の時から料理人になる意志を強く持ち、4より5を多く持つ成績と晴れやかな内申書をぶらさげ、推薦を受けてこの学校にやってきます。
普通の高校生なら、運動が優れていればクラブに入り、監督やコーチ、先輩にしごかれて実力をつけて行くのが一般的です。将来そのスポーツでプロになろうなんて夢のまた夢かも知れません。
ところが連中ときたら心に意志をおさめ、食物調理科に入学し更に調理クラブに入部するのです。
しかも訓練と活躍の場に一般客に食事を提供するレストランまで運営しているとなっては、ただ唖然とするばかり。

私の見習い時代は、くわえ煙草で新聞片手に赤鉛筆舐めてた親方の馬券買いから始まりました。
料理に対する疑問を尋ねると「頭でっかちになるな。体で覚えろ!」と拳骨くらわされたり、一年間の洗い場生活も経験しました。
ジャニーさんに出会うまで、理不尽なことばかりでお先真っ暗なあの頃の私を導いてくれた人は、誰も現れてくれませんでした。
翻って、この汚れを知らない天使達。
灼熱地獄のような真夏の厨房と桜の咲く少し前の爽やかな季節に、現場実習の名目と共に俗界である我々の調理場に現れます。凄いですよ。そして実に面白い。

天空からプロの厨房と言う戦場に舞い降りるやいなや、ちびっこ兵士は、いっちょう前に最前線で闘うのです。
もちろん導くのは私の役目。経験と技術不足は当然承知の上。しかし補って余りあるほどの情熱と探究心で、ひとつ言えばみっつ理解するスマートさ。機敏に厨房を走り回り、けな気にメモを取る天使達を見ていると本当に微笑ましいかぎりです。

それでもプロの料理人は苦言を呈するかもしれない、所詮学生のお遊びだと。
しかし、あなた方は、どんな時も朝5時や6時に起きることが出来ますか?
どうしても魚が下ろしたくて他人より早く厨房に一番乗りしたことがありますか?
そして、煙草も吸わず人一倍働いていらっしゃいますか?
毎日鍋を磨き厨房をピカピカにする天使達のどこをとっても私の同志です。

もしかしたら、この夏には現場実習の名の下に、村林隊長に鍛え上げられたちびっこ兵士達が落下傘で、あなたの厨房に降り立つかも知れませんよ。
いざその時・・・
兵士達の目がランランと輝いたら、着地場所に満足した証拠です。
兵士達の目が感激でウルウルしている時は、自分達の思った以上にプロの戦士達が、力強く優しく、真摯にこの仕事に立ち向かっていると感じた時です。
どうですか・・・?こんな学校の近くにレストランを持ってしまった宿命ですよね。
私は常に襟元正して清らかな天使達を迎えるつもりです。

先日、ようやく伺うことが出来ました。五桂池のまごの店というレストラン。
明るく清潔な店内は開放的で、羨ましい程広く綺麗な厨房にしばし見とれてしまいました。
こここそが、ちびっこ兵士達の鍛錬場。いやいや輝く天使達がそっと羽を休める秘密の棲家。
ホール担当の天使がお客の注文をさえずると調理担当の兵士達が「ありがとうございます」とさえずり返す。
そして役割分担をしながらあっという間に「料理」と言う贈り物をテーブルに運んでくれるのです。
「美味しい?」「美味しくない?」そんなことはどうでもいいではないですか。
そんなことを言うと、なんだ「美味しくない」のかと思うかも知れない。
いえいえ、本当に「美味しい」んですよ。決まっているではありませんか。
でも、そんなことはどうでも良くて、心底「幸せ」を感じる。と言えばいいか・・・とにかく心を打たれたのです。

相可高校食物調理科生徒が運営する
「まごの店」はこちらです
(今回のコラムの写真はまごの店サイトから許可を得て使用させていただきました。)

 

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